「酒は純米、燗ならなお良し。」川西屋酒造さん訪問記〜前編〜

2016.3.13

「酒は純米、燗ならなお良し」と仰ったのは、かの有名な上原浩先生。


私が燗酒の魅力に開眼したきっかけとなった「丹澤山」を醸す川西屋酒造さんへ、酒食ジャーナリストの山本洋子さんの講座の一環でお邪魔してきました。


一般向けには蔵を開放されていない川西屋さんですが、実は訪問したのは二度目。
一度目は、燗酒の魅力を教えて頂いた東中野の更科丸屋さんの飲み切り(飲食店で提供するお酒を選定するための試飲会)に運良く同行させて頂き、あまりの飲みっぷりに工場長からチャンピオンの称号を頂いた時でした。笑

ただ、その時期は酒造りが終わっていたので、今回初めて造りの時期にお伺いすることが出来ました。忙しい時期に、本当にありがとうございます!!

「なぜ燗酒なのか?」

という点は次章でお伝えしたいと思いますので、取り急ぎ、「むしろ、なぜ温めないの?」という工場長のお言葉を拝借しておきたいと思います。笑


ということで、やってきました川西屋酒造さん。

新宿駅から小田急線で一時間半ほど。山梨まであと一歩の神奈川県足柄にて、明治30年より日本酒を造られています。

ちょうど午前中の仕込みを終えたところで蔵を見学させて頂きました。

まず午前中の大仕事であるのが、お米洗いです。
機械で洗う蔵も多い中、川西屋さんでは全量手洗いされていて、それだけお米と真摯に向き合っているのが分かります。(ちなみに、というか、もちろん、全量純米蔵です!!)

また、更に大きな特徴と言えるのが、お米の種類によって水の温度や浸漬(浸水)時間を調節されているところ。
特に、川西屋さんでこだわって使われている地元の酒米「若水」は、まるで絹のように柔らかいため、冷却したお水で浸漬するそうです。

こちらが午前中に洗ったお米。
なんと、水切りの放置時間も計算し、お米の浸漬時間を設定されているというものだから、私は頭がくらくら。

ちなみに、麹米の水切りには手編みの竹ざるを使われています。竹ざるが一番水切れがいいそうです。(かなり高級品でビックリ!)


そして、前日に洗ったお米を(お米の水けを切ることが大切なため)こんな釜で蒸していきます。

蒸し終わったお米は放冷機にかけ、更に蔵の冷気で冷やします。麹米の場合は地べたに広げて冷ますそうです。

丁寧に作られ丁寧に蒸されたお米はとても美しい!!

そして、酒造りの肝とも呼べる麹造りは、大ベテランの79歳のおじいさまが現在も現役バリバリで造られています。

一般的には35度の環境で48時間かけて麹をつくるところ、川西屋さんでは56時間かけられているそうです。それもこれも、燗酒で生えるお酒にするためだとか。

麹室は雑菌の混入を防ぐため、蔵人さん以外入ることは出来ないので写真は有りません。


お次に、酒造りの象徴とも言える「船場」で、仕込みタンクを見せて頂きました。
1ヶ月ほどかけて、もろみを作ります。

タンクによって色や泡の立ちかた、プツプツとしたガスの出し方も様々。
ここまで苦労して仕込んできたお米と麹が生き生きと発酵していく様子が、蔵人さんにとっては可愛くて仕方がないそうです。

…なんと、時々タンクの中を攪拌させる「かい入れ」も体験させて頂きました!
山本さんのお姿をパチリ。

下から上へ引き上げる力を意識して、なかなか骨の折れる作業です。貴重な体験でした!!

しかも、今回は本当にタイミング良く、お酒を絞るところも初めて見ることが出来ました!!
薮田式の船では、アコーディオンのようにお酒をゆっくり絞っていきます。

お酒の出てくるタイミングによって「あらばしり」「なか取り」「せめ」と分けてだしているお蔵さんもありますが、川西屋さんではそのようなシリーズを出されていないため、「これが幻の川西屋さんのあらばしりか~!!」とうっとり。


そして、これぞ川西屋さんの象徴ですね。熟成タンクです。

川西屋さんには2つの銘柄が有り、「隆」は一回火入れの生酒で、「丹沢山」は、温めてこそ花開く熟成酒。
もちろん隆も大変美味しいお酒なのですが、川西屋さんの真骨頂は「丹沢山」。

「隆は入口にして欲しい。本当に飲んで欲しいのは丹沢山。」と工場長。

そんな丹沢山にも「秀峰」と「麗峰」の2つが有り、秀峰はタンクで1年強、瓶詰めして少し寝かせたお酒。麗峰はなんと、タンクで2年、瓶詰めして1年半と、計3年半寝かせたお酒。「でも本当はもう少し寝かせたい」と言うものだから、再び私はくらくら。

ちなみに、なぜ瓶ではなくタンクで熟成させるかと言うと、なんと「空気に触れさせたいから」なのです。

冷酒や生酒好きの方からすると文字通り「!?」だと思いますが、そうなのです。燗酒で美味しい熟成酒とは、空気に触れてこそ、なのです。
瓶詰めしてしまうと瓶の中が真空状態になってしまうため、空気に触れず、熟成が進みません。だからタンクで熟成を早めます。

もっと言ってしまうと、丹沢山は一升瓶の最後の一滴こそ旨い!!

フレッシュ生酒命の方に、こんな面白い日本酒の世界も有るのだということを知ってもらえたら、ファン冥利に尽きます。
それだけしっかり熟成させるからこそ、丹沢山は70度まで上げても全くへたれない、力強いお酒になるのです。


いやー、造りを間近で見ることができ、ますます川西屋さんの酒造りの面白さ、ひたむきさを実感することができました。
日本酒は人の手、そして心で作られているのだなあと改めて。


さあ、次章ではお待ちかねの利き酒タイム!!
燗酒名人の米山工場長による瓶燗、はたまた「スフレ燗」!?
我ながら、とっても面白い記事になると確信しておりますので、次章もこうご期待!!

kajin09

TOKYO

フードコーディネーター

真野遥

好きな日本酒の銘柄:丹沢山、風の森、若波、伯楽星、日高見、早瀬浦、会津娘、天狗舞、天の戸、不老泉etc

お酒大好きフードコーディネーター。 祐成陽子クッキングアートセミナー卒業。 最近のテーマである「出汁と日本酒」を基軸に、レシピ提案やフードコーディネート、ケータリング等で活動中。 有楽町の「后バー有楽」月曜女将。 まだまだ勉強中の身ではありますが、日本酒の魅力や食器・酒器、日本酒に合うの料理のレシピなどを沢山ご紹介していけたらと思います!

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