酒蔵訪問vol.4 松瀬酒造(滋賀県)

2016.3.3

松の司を醸す松瀬酒造様へお伺いしてきました。
お忙しい中、ご無理をきいてくださいました。

滋賀県竜王町に位置する松瀬酒造。
「松の司」という銘酒を醸していらっしゃいます。

早起きは苦手な私ですが、日本酒のためなら何のその。
始発の新幹線に飛び乗り、こころざしを同じくした日本酒プロフェッショナルな先輩方に同行させていただきました。


松瀬酒造様、蔵の中がとってもきれいなんです。
歴史を感じる重厚さ。そしてすみずみまで掃除された清潔感。でもそれだけじゃない。
まるでアートのようなモダンな雰囲気の中に、ピンと張り詰めるものがあります。

澄んだ空気の中に、ふわっ、とろんとした醪の香りが満ちています。
おもわず、深呼吸。。。


こちら、なんと生酛の酒母。
「生酛」とは明治時代までの酒母造りで主に行われていた手法です。

昔は米粒が大きなままの酒造りがほとんどだったため、
蒸米が糖化して溶けるのにも時間がかかりました。

そこで、櫂という棒で蒸米・米麹・水を合わせたものををすりつぶす、
「山卸し(やまおろし)」という作業を行っていました。

こうして環境を整えた酒母に、乳酸菌の力を借りて乳酸を生成してもらい、
その作用で雑菌を防ぎ、堅実で元気な酒母を仕上げていきます。

いまではこの製法をして造られるお酒は、日本酒全体のうち、わずか1%のみ。


そんな、大切な酒母をテイスティングさせていただきました!
初めての経験です。

ツンと酸っぱい香りがしますが、口に含んでみるとびっくり。
先ほどの酸っぱい香りはあまり主張せず、むしろ爽やかで果実のような酸味を感じます。

口の中では、まだ溶けていない蒸米や米麹がポリポリ。
米の甘みと爽やかな酸味、まさに和製ヨーグルトです。
ハマりそう。。。


松瀬酒造様では、使用している原料米の8割以上を地元滋賀県の契約農家に委託しています。

中でも特徴的なのがこちらの、ふゆ みず たんぼ(=冬季湛水水田)。
読んで字のごとく、冬の水田に水を張ったまま越冬する完全無農薬の農法のことです。

水を張ることにより、冬の間は雪が積もってそこだけ早く溶けます。
酵母菌、乳酸菌など低温でよく働く菌が活性化するために水温が他より2~3℃高くなるのです。

そこに水鳥が集まり、リン酸分を多く含む糞を落とし、水田に残った藁や稲株は、
春にはサヤミドロなどの藻類の栄養源になり、天然の堆肥に変わってゆきます。
すると、自ら田の土の力を強めてゆくという天然の仕組みが生まれるのです。

言うは易く行うは難し。
冬場は他の田んぼは水を張っていません。

自分の田んぼだけ水を張ると、隣の田んぼで水が漏れてしまう可能性があります。
水漏れを防ぐには特殊な機械が必要です。
必要な量だけ水路から水をひいてくることも簡単ではありません。

田んぼが密接し、それぞれで管理者が異なるという日本の現状の田んぼでは、まだまだ難しいそうです。


また、この栄養たっぷりの土壌。
初夏にはにょきにょきと雑草が生え、虫も浮草も発生します。
そのため、稲の間に鍬を入れて雑草の根を切る必要があります。

こんなに手間もリスクもかかるのに、こだわるのには理由がありました。


日本酒の技術はかなり進歩してきてますよね。

でも僕はね、ちゃんと自分で米から育てていきたいなと思う。
僕なんかでも、全然まだまだやなと思うのが、田んぼも田んぼごとに土質が違うし、その違いを知って、肥料設定をしなあかんのに、そういったことは全くできてない。

酒造りは冬場の数か月だけやけど、米造りって言ったら、土造りからやからね。
そこにテロワールとか表れてくるんちゃうかな。
そうしないと世界に対抗できひんのじゃないかな。

米造りを語れる、そこに面白さを見出している人がほしいね。

「地産地消」それだけじゃない。

松瀬社長の、世界を見据えた酒造りへの想い。
それが原料、製法、そして酒質に表れている。
そう感じました。


そんな松瀬酒造のお酒、滋賀に思いを馳せながら、ぜひご賞味ください。

お庭のたぬき、かわいかったです。笑

kajin19

TOKYO

酒飲み、利酒師、焼酎利酒師

今井志緒里

好きな日本酒の銘柄:羽根屋、七賢

岐阜県出身。 高校卒業後、東京農業大学 醸造科学科へ進学。 在学中、日本酒への興味が湧き、大学卒業後は大手日本酒販売店へ就職。 転職により日本酒の業界から離れたことで「やはり自分の住む世界は日本酒の世界だ」と認識。 現在は利酒師、焼酎利酒師として日本酒と食に関しての事はもちろん、飲酒をする方の健康面に関してのイベントや情報も発信する。 『まず、日本酒に触れてみる。 学問として発酵を学んできた人間としての視点から そんなきっかけづくりをしていきたいと日々感じています。』

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