負け方と酔い方

2015.8.3

うだるような暑さのなかで
イヤホンの音の世界のなかに生きていることが
冷房ガンガンのcafeに逃げ込むのと同じくらい
この季節から脱出する唯一の方法なのかもしれない。

長すぎる地下鉄の動く段々に動かされて、外の空気を吸い込んだら
音の世界にしか生きられないんじゃないかって思うほど強すぎる日差しと空気はうっとうしくて、
愛しい香りがした。


何かを手にいれるために何かを失うことは必然で
手に入れたものには必ず側面がある。


自分より少しだけ不器用そうに少しだけ傷つきながら生きる女友達は
「寂しい。辛い。不安。」と誰かが声をあげれば
わかるよー!!と根拠の無い音を発して喘ぎ合う。
わたしはコーヒーにもミルクを少しだけ入れたいのだけど
傷を舐め合う作業だって、カラカラの夏の肌には気持ちいい刺激だと思ったって悪くはない。

けれどわたしは相当不器用な女かもしれなくて、
共感と異議のあいだで物事を語ることは不可能であることを悟った。
その上どうしたらいいかは、結局自分で決まってるし
結論的に話すことになってしまうそのやりとり。
だから女友達はそういう可愛げのない自由人であるわたしを認めてくれる、
感性溢れる女しか友達にならない。

そういうのは同性としてなんとなく申し訳なくて、それなのに友達とは笑い合っていたくて
結局ひとり飲みをしたりするきっかけになったりもしたのかもしれない。
そんなわたしを男気があるとか、
単なるさみしがり屋とか 言ってくれる子もいるけど、
単に飄々とお花の衣装を纏った、少しだけ感受性に溺れた獣なんじゃないかって思うことも。

男が紛れもない狼なのではなくて、女も最高に尖った牙を持った兎だし
フルムーンの晩には調子も狂い、誰にも晒せない純朴で混沌とした気持ちを綴ったノートを
誰だってこころのなかに持っている。

だいぶ昔に書いた文字も、今書いた文字も
ちゃんと見えててそのもの全てが『優しい方向』に行くように願ってくれる人は
地底の奥の方で繋がっているようで、胸の中で困ったことも反響し合い伝わり合う。

そういうのが人間臭さであり、滅多に出会うことが出来ない出会いというものだってことは
日本酒にめまいを起こしていたような時代からわかっていた。

''俗っぽいことにしがみ付いてる大人にならないように。’'

''笑顔が似合うんだから。’'

そう言われていたセリフが今のわたしを支えている根底の全てである。
飄々としか見られない今があるのは
そのせいであるのか…?


わたしにとって
世の中の女性にとって音(言葉)とは道路標識であり、人生の酔い方のボリュームである。

TOKYOに住む完全に恋愛体質とは言えない女性だとしたって、
口数少ない彼からの10回に1回程度の重要な言葉「◯✖️◯✖️◯✖️ …..」がそれにあたることになると思うし、
誰だって道に迷わず目的地に到着したくて、
ほんの少しのプライドは捨てずに出来れば勝ちたいって思ってる。
足元ぐにゃぐにゃになっちゃ、せっかくのヒールも台無しになって
せっかくのお酒もただの悪いtrapだ。


不確定なことの繰り返しである人生を
ただの呑んだくれにならずにナイスオンするためには。。?


何が必要で、何が違いなのか?


今まで思いもつかなかった手法は簡単そうで、
身近なことであるのに気が付かない領域の事だった。
それはつまり、「上等な負け方」を身につけることである。
上手い負け方とは上手い酔い方と言い換えられる可能性があるのかもしれないことに気がついてしまった。

「MAKI、酔ってるねー!」って言われたら
「あんた負けてるねー!」って言われてるみたいで
「酔ってないし!!」ってムキになって言い返す自分は
あまりにコドモじみた漫才で情けない上に、そういうのって損してる。

ただ負けるんじゃなくて、上等に負けることができるオトナ、
あなただったら身の回りで誰を思い浮かべる?

明日もし自分の見える世界から色が消えて見えたとしたら、
こころとリンクする感動は完全に音と言葉になるはず。
お酒も同じく、今まで水のように飲んでいた日本酒に
もっと上手く負ける方法はたくさんあるのだ。
全くお酒を飲まない人の気持ちが全く理解できなかったし、
全く飲まなくなることなんて今の所考えられないけど、
その全くお酒を飲まない人は間違いなく上等な負け方が出来る勝ち組だって事を
意味軸も知ったのだ。

理不尽で不確定な人生の楽しみ方を何処かで習得した賢者は、
私とは違った隙間を楽しみながら何処かで微笑んで酔っていると思う。


「まぁ、まだ自分はそんな域に達していないんだけどね。笑」

長年お世話になっているcreative businessmanはデザイン画を手にしながらそう言って


それからいつもより激しく辛口で抜け感のある夏向きの同じお酒を
十合近く交わしながら笑ったのだ。


= 春鹿 =
純米超辛口(奈良)

bijin30

TOKYO

代表取締役 / 株式会社 5TOKYO

野口万紀子 [ No.0030 ]

好きな日本酒の銘柄:ロ万・鍋島・手取川・北光・達磨正宗

<株式会社 5TOKYO 代表取締役 / クリエイティブディレクター / コラムニスト>

【取得資格】
SSI認定 唎酒師
WSET LEVEL1 AWARD IN SAKE
SSI認定 日本酒ナビゲーター
日本野菜ソムリエ協会認定 パーティースタイリスト

【プロフィール】
東京都目黒区生まれ。女子美術短期大学卒業。モデル、芸能活動後、外資系アパレルブランド、融資コンサル会社等での経験を経て、ライター業に転身。その後、株式会社 5TOKYOを設立。『日本酒 × ファッション・アート・音楽』をテーマに、日本の伝統とトレンドを「5感」で繋げる日本文化の楽しみ方を提案。ソーシャルメディア「SAKE美人」「HANA美人」キュレーター。和酒フェス公認 和酒アンバサダー。

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