SUIGEIと肉厚な夜

2015.7.12

雨に濡れたその坂道は久しぶりに見る光景で、
もう随分このあたりには来ていなかったんだな、
と気がついた。

いちねん とか
にねん とか

そういった時間の流れ方が
夢でも見ていたかのように過ぎ去って、

パンケーキなんかつつき合いながら
流行りのカフェで好きな男の話したりするような
可愛らしいタイプでもないのに、
そういうのに付き合ってもいいかなって思えるほどの友達にも
一年以上会っていなかった事に気がついた。

懐かしいな。このあたり。
そんなに来ていなかったっけ。


「久しぶり。ここ人気店なんだよね。」
そう言って友人が連れてってくれた店は
その坂をほんの少し下ったところにあった。


こじんまりとした入口を入ると
賑やかで活気に溢れた店内はすでにお客さんでいっぱいだった。


カウンターに座ると目の前には大きな炎がメラメラと炊き上がっていて、
何のショーが始まるの?というくらい取り囲んで皆が見物している。

それと同時に嗅ぎ慣れない何かを燻すような独特の香りが店内を充満していた。

燻しの中で行われている炎のサーカスの主役となっているのは鰹だった。

ここは土佐料理の専門店。
高知名物「藁焼き」なるものだった。

ぶ厚く切った鰹を藁を使って強火で燻し、
表面に焼き目をつける。

漁師の賄い料理と言う説もある藁焼きは、
生食による食中毒を防ぐためにもその調理法が使われていたそうだ。


ひとくち食べた瞬間、
お肉なの?!と思うほどの肉厚。
食べごたえ充分のニクアツ具合は
一杯目のビールもそこそこに
早くお酒にシフトするしかないと
日本酒好きなら誰しもが思うほどの感触。


その日出逢った日本酒は純米吟醸『酔鯨』。
爽やかで酸味が感じられるスッキリした飲み口が、
燻しの香りとニクアツの鰹にぴったりで、
ほのかな吟醸香も感じられるのに
苦味がすっと消えて甘みも感じる旨さ。


鰹のたたき以外にも美味しい土佐料理は沢山あって
どろめやうつぼの唐揚げなんかも美味。


ニクアツの感じが激しくお気に入りになってしまったわたしだが、
酔鯨がより美味しく感じたのは
あの燻りの香りおかげもあったのかもしれない。


お互いのビジネス談議をつまみに
香りを食べて、香りを飲んできた。
そんな夜だったのだ。


ごくごく..
いつものようなお猪口の運びではなくて
味わい絡ませて楽しむ。


日本酒と香りの付き合いは
思っているよりも深そうだ。


そんなニクアツな夜。



●わらやき屋●
東京都港区六本木6-8-8
六本木ゴーディービル1F
03-4540-6573

bijin30

TOKYO

代表取締役 / 株式会社 5TOKYO

野口万紀子 [ No.0030 ]

好きな日本酒の銘柄:ロ万・鍋島・手取川・北光・達磨正宗

<株式会社 5TOKYO 代表取締役 / クリエイティブディレクター / コラムニスト>

【取得資格】
SSI認定 唎酒師
WSET LEVEL1 AWARD IN SAKE
SSI認定 日本酒ナビゲーター
日本野菜ソムリエ協会認定 パーティースタイリスト

【プロフィール】
東京都目黒区生まれ。女子美術短期大学卒業。モデル、芸能活動後、外資系アパレルブランド、融資コンサル会社等での経験を経て、ライター業に転身。その後、株式会社 5TOKYOを設立。『日本酒 × ファッション・アート・音楽』をテーマに、日本の伝統とトレンドを「5感」で繋げる日本文化の楽しみ方を提案。ソーシャルメディア「SAKE美人」「HANA美人」キュレーター。和酒フェス公認 和酒アンバサダー。

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