初めてNIHONSHUを手にした頃の話

2015.7.7

くたびれたテーブルに寄りかかりながら、
今日一日の愚痴を吐き出しつつ一杯ひっかけてる。

そんな何処かメランコリーな世界に見るおじさん像..。

ハタチそこそこだったわたしにとって、日本酒ってそのぐらい謎めいた世界の産物だった。
ひとたび足を踏み入れたら抜けだせなさそうな..

それこそ悪酔いの極みみたいな状態になりそうな毒水。

本当にそんなイメージだった。

それがいつの間にか
お猪口片手にお薦めのおつまみをつつきながら飲む。飲む。
ひとりで
いつものお店でね。

お酒はたぶん若い頃から合ってる方で、
学生時代に仲間とふざけて飲んでいたジュースみたいな焼酎から
ターゲットは完全に赤ワインに。
グラスワインっていうのは
ワインの知識なんか何も知らない人のためにあるメニューだなんて事も知らずに注文していた。

赤ワインについてはそこからかなりハマって、
それなりに好きな好みとかカテゴリーも出来たんだけど、

そこからどうやってこんな風に日本酒という異文化を
自分のスタイルの中に引き込んできたのだろうか。
自分でもびっくりする。

だって女の子と日本酒の繋がりって
どう考えても???だったから。

ただ若いだけで素晴らしいのに
自分の事が好きになれなかったその頃のわたしは、
いつも自分の中での“女性像”を持っていた。

大きく違うジャンルの仕事に転職して、
『あの子今あんなことしてるらしいよ』
とか少しも見下げられたくなくて、
必死に自分の思い描く勝手な“女性像”をかかげて突っ走っていた。

ワインの味なんて何も分からないのに
とりあえずグラスをクルクル回しながらBARのハイチェアに脚を組んでるのはまさに、

フランス語も話せないのにフランス語必須の会社に入社して
頭の中滅茶苦茶なのに
涼しい顔をしまくっていたその時の自分と全く同じだったんだと思う。

仕事が終わったらCHANELの香水を迷惑な程つけて
髪をクルクルに巻いて
ハイヒールをカツカツさせて、
これが大人の女なんだって自己満足の勘違い女だったと思う。


つまりわたしにとって
お酒はスタイルであり自分の“女性像”の投影であった。


メニューも無くて注文の仕方も分からないようなBARとかに連れていかれて、
遊び方を教わる新入社員みたいな関係性が
世の中で皆無になってきた今は

スタイルやカッコつけでお酒を飲む人すら減った。

その後にやってくる
「お酒をこころから美味しいと思う感覚」はもっと忘れ去られているのかもしれない。


カッコつけで飲んでいたお酒から
日本酒を好きになったのはその頃だった。


水が流れるような妖艶な入り方の日本酒は
ハイチェアに座ってグラスをクルクルする雰囲気じゃないのだけど、
その分とっても女っぽいお酒だなと思うようになった。

食に関してとっても興味があった時だったから、

更に味わいそのものを楽しむ事自体が
ある種の“格好”なんだと感じるようになった。


私にもずっと通ってたお店っていうのがあったけど
そこはわたしの居場所だったし、
そのお酒そのものもわたしの居場所になってくれてた。

こういうのは男ウケが悪いとか
ひとりで飲む女は嫌だとか
思う人もいるかもしれないけれど、

例えばそれがお家で可能なら
ちょこっと気の利いたつまみを作って
晩酌だっていいと思う。


ひとりで飲む女は

ひとりで飲みに行く男の気持ちも少しはわかる人が多いと思う。


アルコール感を感じる香水をやめて、
似合わないって気づいた巻き髪はやめて、
スニーカーも履くようになった今は


味わいの深さで格好というものがとれる日本酒で、
お薦めをつまみながら、
きっと飲む。



赤ワインが憧れの先輩だとしたら

日本酒は素顔を見せたい恋人かな。

bijin30

TOKYO

代表取締役 / 株式会社 5TOKYO

野口万紀子 [ No.0030 ]

好きな日本酒の銘柄:ロ万・鍋島・手取川・北光・達磨正宗

<株式会社 5TOKYO 代表取締役 / クリエイティブディレクター / コラムニスト>

【取得資格】
SSI認定 唎酒師
WSET LEVEL1 AWARD IN SAKE
SSI認定 日本酒ナビゲーター
日本野菜ソムリエ協会認定 パーティースタイリスト

【プロフィール】
東京都目黒区生まれ。女子美術短期大学卒業。モデル、芸能活動後、外資系アパレルブランド、融資コンサル会社等での経験を経て、ライター業に転身。その後、株式会社 5TOKYOを設立。『日本酒 × ファッション・アート・音楽』をテーマに、日本の伝統とトレンドを「5感」で繋げる日本文化の楽しみ方を提案。ソーシャルメディア「SAKE美人」「HANA美人」キュレーター。和酒フェス公認 和酒アンバサダー。

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